随筆

東忠の坂をのぼって(その五)

小千谷 東忠
 突然ですが、旧天竺町にある山王神社の奥にケヤキの大木があり、その下にお稲荷さんの祠(ほこら)があるのをご存知でしょうか…。実はこれ、東忠稲荷と呼ばれています。
 お稲荷さんとは、もともと五穀豊穣の神様。稲が生る「稲生り」という意味だったものが、稲を荷なう神様の姿から「稲荷」の字が当てられるようになったのだとか。そして今では五穀豊穣だけでなく、商売繁盛の神様としても信仰されています。
 なお、東忠の代々の女将さん達は、この東忠稲荷を毎日のようにお参りしていたのだとか…。しかし、今の私くしは随分とサボっていて(ゴメンナサイ!)、一か月に一度だけ、毎月二十三日にお参りしています。
 またその際には、「祠の周りの草取りやお掃除をするとともに、上等な油あげを二枚あげるように…」と、先代のご主人(東さん)から言われていて、それを守っています。東忠が二百八十年もの長きにわたって続いているのは、東忠稲荷のお陰なのかも知れませんね。

*この随筆は、小千谷新聞の2024年9月7日号に掲載されたものです。